エンジニアから人事へのキャリアチェンジ。社内での実践が結ぶキャリア(ゲーム×学びのファシリテーター伊藤哲之輔さんキャリアインタビュー1/3)

キャリアインタビュー ゲーム×学びのファシリテーター伊藤哲之輔さん

今回はゲームを用いた研修を会社で実践されている、ゲーム×学びをテーマにファシリテーションされている伊藤哲之輔さんにおはなしを伺いました。

写真:オフィスにてお話を伺いました!

《プロフィール》
現在(2019年3月現在)株式会社フォトクリエイト/株式会社CCCフォトライフラボ に所属。2002年 新卒でシステムエンジニアとして大手メーカー系企業へ入社、その後1社を経て自社サービスを運営する企業のエンジニアとして入社、2018年の4月にグループ会社の人事部門へ異動(出向)し、エンジニアの採用に関わる仕事や「まなびプランナー」という肩書で社員育成をしています。
エンジニアから人事(採用・育成)からのキャリアチェンジしたいきさつや今のキャリアにたどり着いた過程について本記事は伺っています。
エンジニアから人事(採用・育成)からのキャリアチェンジ

今の仕事についてまず伺っていきたいと思います。

今はどんなお仕事をしていますか?

現在の人事部門では主にエンジニアの採用と、グループ社員の育成を担当しています。グループ会社で一括採用した新入社員の研修設計・実際のコマでの講師担当が育成の現在の主な領域です。特に、ゲーム・プロジェクトアドベンチャーを用いた経験学習が特徴です。

その他、ワークショップのデザインやファシリテーションの業務の依頼があり、特に半期ごとの目標設定の時期や、組織編成が変わった直後のチームビルディングに関わることが多いです。
その他社内のイベント企画、レクリエーションの設計なども行います。

お仕事はお忙しいですか?

基本的には平日の9時〜18時です。残業は平均して週に10時間程度。面接の実施が求職者の業務終了後になることが多いため、20時以降に面接が組まれるケースもあります。今後は土日にハッカソンなどのイベントや勉強会スタッフなどを行う予定があり、休日の出勤も想定されています。

お仕事ではどんな関係者との関わりがありますか?

人事部門としての業務は経営層からの要望に基づいた動きが多くなっています。またグループ会社の人事部門のため、各社代表がステークホルダーとなることが多いです。
一方、自身の担当領域は経営計画に基づく開発計画ベースで現場と採用計画をたてるため、採用現場である開発部門との関わりが最も多いです。

今やっている仕事に対してこだわりや思いをぜひ聞かせてください

「カタリスト」という職種名をつけている会社がある、と聞いたときに感じたことですが、自分が何らかの形で関わることでその場・組織が活性化するということにこだわっていきたいです。(自分自身が化学変化するわけではなく、関わる対象の化学変化が促進されるような触媒になりたい)そのために必要な手法はいくらでもあると思うので、その学びを止めず、関わり方の引き出しを拡げていきたいです。

本業以外になにか活動している場合はぜひ教えてください

自社にて副業に関する取り組みが許可される見込みなので、自社に関わらず課題を抱える現場、あるいはコミュニティなどへの関わりの場を増やしていこうとしています。直近ではエンジニアの集まる会での親睦を深めるレクリエーションの設計などを行いました。

「教える楽しさ」の原体験からつながった職選び
今のお仕事に行き着いた原点はどういったところにあるのでしょうか?

学生時代から「何かを教える」ことについては自身の中で強みを感じており、就職してからも座学型の研修などはよく実施していました。特に学生時代は数学の先生との出会いの中で「教える人によってこれだけ成績がアップすることもあるのか」ということに気づき、良い先生に出会ったことのないという運だけで成績が悪くなり、自身の進路の可能性が絶たれてしまう人たちがいることに強い課題感を感じていました。

今の仕事になる前は、ITの面白さを学生時代に感じ、そこに携わることで単にいち塾の講師で年間数百人を相手に良い先生であることよりも、億単位の人々に何か間接的に関わることのほうがやりがいのある業務になるのではないかと思い、システムエンジニアとしての職を選択しました。両親が「手に職」系の職業についていことにも影響を受けています。

教えることの重要性に気づきつつも、ITの世界の面白さや多くの人に影響を与えたいと思ったんですね。

多くのひとに使われることを改めて意識したエピソードがあります。
「いつもお世話になっております」っていう定型文がありますよね。それを「ちゃんと意味合いをつけて書いてくださいね」って新入社員研修で教わったんですよ。自分の顧客が今目の前で関わってる直接の顧客だけではないと思ってほしいと。言い換えると我々の会社が提供しているものは「まあ使った事ない人なんていないよね」って自分達で思ってほしいと。だから「どこかしらで当社の製品をお使いになってる初めて会った方、お世話になってます」と伝える。
「いつもお世話になっております」って言葉を使うときに「どこで?」みたいな疑問があったのですね。それに対してそういう明確な説明があってすごい印象には残ってますね。
これは自分の給料がどこから出てるか、それはお金を払ってくださっている方から、という話に繋がってくるんですけど、はじめて関わるひとも当社の製品を買っていただいてる方かもしれない。または自分が関わったシステムの一部でも何か使われてるかもしれないみたいな。

自分が関わったサービスがこんな風にいろんなところで関われてるって事自体が、学習塾で年間数十名としか関わることのできない先生よりはインパクトがあるなと感じた部分ですね。

新卒で入社したときはどんな基準や理由、思いなどで選びましたか?

「手に職」をつけようと技術者であるエンジニアとなることを選択しましたが、学部時代の専攻とは無関係だったので、「研修の充実している大手」を絶対条件にしていました。そのために基本情報処理技術者(当時は第二種情報処理技術者)などの資格を取得していたため、研修期間中はよりスムーズに学ぶことができましたし、技術以外の研修が充実していたことが結果的に現在に強い影響を与えていると感じます。

今やっている仕事に必要なスキルはどんなものですか?それはどのように身につけましたか?

ベースは自身が受けた新入社員研修にあると思っています。
その上で他の方の研修を受講したり本を読んで不足しているバックグラウンド(インストラクショナルデザインや教育心理学とか)を補完していくようにしています。
採用に関してはいろいろな要因が複合的に絡まっているように感じるので、まだこれ、というスキルが見つかっていない状況です。

エンジニアから採用や育成のお仕事をされている伊藤さんですが、あらためて今までのキャリアとして他の選択肢はあったのでしょうか。いまのお仕事を選んだ理由などぜひ聞かせてください。

学生時代の時点ではアルバイトをしていた学習塾の講師となりその室長となるというキャリアプランもありました。しかし、向こう20年同じエネルギーで子どもたちに接することはおそらく難しいだろうとその室長を見て感じ、前述の通り誰に対して何を届けたいのか?という観点でシステムエンジニアを選択しました。
その後現在の人事部門とエンジニアの比較の中では、エンジニアリングマネージャーのようなエンジニア組織に対して関わっていくという選択もありましたが、自身のバックグラウンドにある知識はもっと大きな組織に対してはたらきかけることに使いたいと考えたためです。(そもそもエンジニアリングに対して今後も興味を持ちづけることが難しいと感じた、ということも大きいですが)

社内でワークショップ形式の研修をやってみて「楽しい」という参加者の声が自身の興味を強めたり、社内の研修担当につながった
またエンジニアから採用や育成をされていますが、そのきっかけなどはありますか?

一方前職のSES(システムエンジニアリングサービス)で「各現場に散らばってしまった社員の一体感を醸成し、顧客先での常駐ではなく自社サービスの開発へつなげたい」という思いから開催していた社内勉強会で、ワークショップ形式での研修スタイルを実施したところまずは「楽しい」ということで評判がよく、自身でもそのワークショップの設計に強い興味を持ち始めました。

もともと新卒入社した企業での研修でもゲーム・プロジェクトアドベンチャーなどワークショップ形式の内容があり、その内容などが強い思い出となっていたため、その領域は面白そうだ、と思ったことがきっかけです。

当面は自発的な勉強会での活用をしていたのですが、自作のワークの評判が社内に知れ渡ることで新入社員研修でも丸一日を任されたり、その課程で LEGO(R) SERIOUS PLAY(R) や、Points of You(R) など確立されたメソッドを学んだりしていくなかで、その当時はエンジニア部門の一員として研修を担当していただけだったのですが、もっとこの分野を専門的に掘り下げ、自身が良い先生となることで自社サービスを良くしたり、それを世の中に広めていく人たちの力になることで彼らを通して億単位の人に間接的に関わる、ということを目指したいと改めて思ったからです。

伊藤さんのなかで「ゲーム研修」はとても重要なキーワードなのですね。

そもそもゲームでの研修が「楽しい」と感じたのは、どういった部分に惹かれたのでしょうか?
1つテーマにしてるのが、ある程度のクリアが困難なゲームを共に乗り越えた仲間みたいなイメージ。
実際にやったことを実はちゃんとは覚えてなくて、そこで学んだ結果を覚えてるっていう事がすごい重要だなと思っています。1つ1つのゲームにおける活動にはこちらの考えたねらいというものがあります。例えば価値観が違う人同士で自分たちが自分たちの有利になるような主張ばかりしていてもゲーム内の資源が枯渇しちゃってクリアできない、みたいな。次やるときはそういう教訓を活かして俯瞰して見れるようにしよう、という直接的な学びがあるのだけど、それに加えてうまくいかないことの悔しさとか、もっとこうしてみれば良かったという気付きが発生する。そういう風な状況ってやっぱり楽しさとか没頭感みたいなところからくると思います。

他にはよくあるのがやっぱりある体験をして、ゲーム体験を「抽象化して次こうします」と決めたとする。でも翌日別のゲームをやると「お前こうしますって昨日言ってたのにやってねえじゃん」ってなる。そういったいろんなゲームを通してまた学ぶ機会が生まれるのもおもろいなと思います。

それはゲームのルールが違うから起こる現象ということでしょうか。

ゲームはあくまでもひとつのゲームで、学んでほしいのはそこから抽象化した概念になるように注意しています。ルールも結末もゲームによって全然違うので。
よくある単純な例として「次のゲームではタイムキープします」とチームで決めるとします。。しかしゲームのスピードが早くすごいバタバタしてしまうと、突然そのタイムキーパーがいなくなるみたいなとかって起きますよね。そんなような事がいろんなケースで起こるんですよ。タイムキープが大事だって思ったし、これがクリアするには必要だってわかったにも関わらずやらない自分達みたいな。

自分の行動に矛盾が起きることに気付く体験ができるということでしょうか?

そうですね。矛盾ってか、やっぱり「わかる」と「できる」が違うっていうのかな。抽象化した時ってやっぱり必要だとわかっているけど、やんないみたいな。

ゲームでの研修体験が楽しいと思ったからこそ、なんかそれを深めようと思ったみたいなのが繋がりますか?

自分達で勉強会やるようになったりとか会社で研修講師みたいのをやったりする中でもっとうまくできるかなみたいなと思うようになりました。よりねらいをちゃんと作ってそこに落とすみたいな。ゲームでいうとデザインみたいな感じだよね。

ねらいを決めて実施していくようになっていくと。

よりファシリテーション寄りになっていくっていう感じ。デザインとファシリテーションって僕の中で、その2軸のバランスがすごくすごく難しいなと思っていて。それがファシリテーションを手放すってなんだろう、とまだ考えているんだけども。デザインしすぎると手放せなくなるんですよ。自分の予定していたゴールに到達してほしいし、時間通りに進むことを期待してしまうから。だけどそれを仕組み過ぎるとなんか変な感じ、受講者がただ仕込まれたストーリー通りに動かされてしまうように感じてしまったり、そこで自ら気づく、という機会を奪ってしまうことになることもある。

ねらいを定めるデザインをほどほどにしつつ、その場で起きることに対してより効くフィードバックができるようになればいいなと思っています。成長には適切なタイミングでのフィードバックが大事ではないかと。

これで「1.エンジニアから人事へキャリアチェンジへ」の記事は終わりとなります。次回の記事もお楽しみに!