今後は感動する研修になるゲームをデザインしていきたい(ゲーム×学びのファシリテーター伊藤哲之輔さんキャリアインタビュー3/3)

キャリアインタビュー ゲーム×学びのファシリテーター伊藤哲之輔さん

今回はゲームを用いた研修を会社で実践されている、ゲーム×学びをテーマにファシリテーションされている伊藤哲之輔さんにおはなしを伺いました。

写真:伊藤さんが持っているゲームコレクションの一部

今回は伊藤さんのキャリアインタビュー最終回。ゲームで行う研修のおもしろさはどこにあるのか。「感動する研修」を作りたい伊藤さんの野望と一緒にお届けします。
今後は感動する研修になるゲームをデザインしていきたい
今後やってみたいなと思うことはありますか?

現在の興味関心は「ゲームをデザインすること」です。
ゲームの面白さは普段と違う役割を演じることができることと、簡単に失敗の経験ができることだと思います。
自身新入社員研修中に過労で倒れてタクシーで自宅送還されたという経験があるのですが、そのような大きな失敗ではなく(それはそれで思い出深いので良いのですが)、安全な場所で挑戦し失敗すること、普段の上下関係を超えた役割を演じることで自身を拡張すること、というゲームの特徴を活かし、もっと面白く学べるゲームをデザインしてみたいと常々思っています。

伊藤さんが持ってらっしゃるカードゲームの一部
どういう系のゲーム作りたいんですか?

そのテーマが明確に見えてたらもう誰かに相談して作ってるかな・・・。

フォトクリエイトという会社には「感動をカタチにして全ての人へ」っていう理念があるんですね。僕はその中でこれだけはって思ってるのは、やっぱり感動する研修を作りたいんですよ。

感動する研修というと?

感動っていくつかの要素があるわけなんですけど、要するに心が動けば感動って。それって驚く事とかもそうだし、なんかこれやってみようと思う気持ちとかもそうだし、いくつかあると思うんですよね。

今、NLP(神経言語プログラミング)をちゃんと学んでいきたいと思っているのですが、「アンカー・アンカリング」というものがあって、五感情報が引き金となって特定の感情や反応を引き起こせるようにコントロールするというものなのですが、それをちょっと応用して、何らかの仕掛けを作ることで驚き・楽しい・悔しいという気持ちを作り、その感情から学ぶことの楽しさ・発見の喜びみたいなものにつながっていくような研修にしたいと思っています。

そういう意味で研修の内容として何をやるかっていうのは比較的どうでもよくって、どういう状態を作るのかの方が重要、つまり強烈なインパクトと共にそこで行われた体験した学びをセットにして10年残すっていう感じ。

毎年絶対同じ事はしたくないっていうか、ばれちゃうので。
それってすごくやっぱりエンターテイメント性があるなというか、僕が好きな物の1つにリアル脱出ゲームっていうのがあるわけなんですけど、あれは本当すごいなって。やっぱり言葉を簡単にすると感動したわけですよね。すげえなと思って。なんじゃこれって。

リアル脱出ゲームにどんなところが具体的には感動しましたか?

ふつう最初は失敗するんですよ。リアル脱出ゲームっていう商標を持ってるSCRAPという会社は、リアル脱出ゲームの楽しさは何かっていうと悔しさだって言うんですよ。クリアする事の楽しさじゃないんですよ。あれのすごいところって簡単な物が組み合わさった結果見落とした物とかがあって、それに全て気が付いてストーリーを明らかにして最後のゴールに行くっていう物なので。映画の伏線の回収のように、その作り方がすごいなっていうか、なんでこれに没頭しちゃったんだろうとか、そういう発見はものすごい多かったんですよね。

没頭感とは違う話なのですが、例えば会議なんかで、「この情報大事なんじゃない?」って言ったら「いや、それはない」とかってすぐ否定しちゃう人がいるじゃないですか。だけどその情報はすごく重要だったみたいな事がゲームの中でよく起きる。チームで何かをするときに起こりがちな問題をゲームの中でも体験できて、それに気づいて今度仕事では気をつけよう、って思ったりする。遊びに行ってるだけなんだけど。

時間も限られたりしますもんね。

そうそう。この関係がものすごいおもしろくなって。そこでやっぱりゲームっていうものがそもそも何なのって事を考えた時に、ロールプレイングとかの関係性みたいなものっていう本質的な事がすごく入っててすごいなって。ある人はこつこつ膨大な作業をやってくれる一方、、一瞬のひらめきで何とかしちゃう人とかもいてみたいな、多様性みたいのあるじゃないですか。そうやってその時間の中でみんなが何かしらのかたちで貢献できるみたいなケースがあって。問題自体はひとつも解けなかったけど情報整理をしてくれたとか。SCRAPさんの話でもとにかく主人公になるっていう事をどう演出するかみたいな事を気を使ってるらしいんですよね。そもそもSCRAPの加藤さんがなんであれを作ったかっていうと、映画とかを自分で見る、消費するっていうのがおもしろくなくって、主人公になりたいと思ったから作ったみたいな話をしてたんですけど。それをちゃんと演出してあげるっていう事があのゲームの面白さのようです。。

ゲームとしての遊びだけじゃなくて、ちゃんと学びがある物に作りたいみたいなのがあるんですか?

その中にもし何かがあればもっとよい。まだレベルが低い話でいうと、例えば会社の「感動をカタチにしてすべての人へ」っていうビジョンを空で言える人と言えない人がいるわけですね。それをゲームの中に例えば大事なヒントにしたり問題の答えにしてあげた時に、その言葉をゲーム中に50回ぐらい言うとか。これってどういう事だろうとかって考え出すような作りにしとけば覚えるじゃないですか。そういう風にしてゲームシチュエーションっぽくしてあげるといい。行動指針みたいなやつとかも、「ほら、これやんないからこのゲームできなかったんだよね」っていう仕掛けにしておく。7つの習慣ボードゲームもそれに近いですよね。Win-Winを考えるみたいな事をやんないと絶対勝てないっていうのはそういう作りになってる。やっぱり自分事になるんですよね、ゲームって。

それはゲームから現場に持ち込むところとかも何かあったりするんですか?

なんで僕は新人社員研修がよかったかっていうとやっぱり繰り返しされた事、経験学習モデルをちゃんと回したからよかったんですよね。ゲームやってこうだってわかって、でも実際にやろうとすると忘れちゃって。その繰り返しによって、自分の中でほんとうの意味で「腹落ちする・身につく」っていうことが起こると思っています。

いろんなゲームでそこをすり込んでいけば、逆にいえば仕事だってゲームみたいなもんじゃんって思えるようになるし。仕事のゲーム化みたいな話はよく言いますよね。ザコ敵倒してってレベル上げて呪文覚えてみたいな、なんかそういう感じとか。そうすると辛くはないみたいなものもあったりしますよね。ある意味見えてるみたいなところとかってあって、今このボスキャラに勝てないのはレベルが足りないからだと思えばレベル上げればいいじゃんっていう発想に向かうので。

それで自分のレベルアップすればいいなっていう発想にいけるって事ですね。おもしろいな。仕事そのものの考え方を変えるみたいなとこもあるんですね。

そうそう。理不尽な事も起こるしさっていう。それはそういうキャラクターのボスキャラがいるんだと思えば、まあ別にふーんって。
違う装備買ってきたり別の呪文使ったりして倒してやれっていうモチベーションになる。だからこそ新しいことを学ばなきゃという必要性を感じる。

体験したらすぐ実践して経験として蓄積していく
ちなみに今ハマってるカードゲームは何とかあったりするんですか?

最近1番これはいいって思ってるやつは、これをいいって言い出してからなんと1年は経とうとしてるんですけどMagicMazeですね。


どんなゲームかの詳細は伊藤さん自身が記述されたブログをどうぞ

どのようなゲームなのでしょうか?

ボードゲームで制限時間内にチームで協力してコマを脱出させるゲームです。その際に話すことが禁止され、それぞれの人は一定の行動しかできないので、「誰かがエスカレーターを上ってくれない」といった状況が生まれても、それを直接指示することはできなくて、「あなたのできる行動のうちどれかをやってくれると助かるんだけど」、っていう気持ちを表して伝えることのみで進行するゲームとなっています。

実際に研修で実施されたのでしょうか。

今年の新入社員の研修でやりました。自分ができるアクションは前に進むこととエスカレーターを上ることだったり割り当てられているけど、どのコマを前に進めるべきなのか、またはエスカレーターを上らせるべきなのかというのは自分で考えないといけない。そんな風に自分が今何をすべきかを全体を見ながら考えていくんですが、盤面ばかり見ていると気づいたら制限時間が来ちゃうんです。自分ができることをただやるだけなのに、全体のゴールを目指すとなると、自分だけのことを考えるだけではこんなにも難しいのかと思ってしまいます。

他にはありますか?

プロジェクトアドベンチャーですね。プロジェクトアドベンチャージャパンっていう団体がやっているものです。例えば高いところをみんなで協力して渡るものだったり、ロープでお互いを支え合って信頼関係を作るといったゲームが色々あります。

そのアクティビティの中にすごい簡単なものがあって、みんなで座った状態からせーので立ち上がるみたいなワークがあります。
「これをやってみましょう。せーの」って。やろうとするとはじめは起き上がられません。色々やるなかでやり方を工夫した結果「腕こんな風にした方がいいんじゃねえ?」とか言い出して、ばっとできるじゃんみたいな。こういった自分達で目標設定をして、それに向けて改善方法を考えようとするゲームは競争させても普通におもしろいし楽しいなと思います。みんなで考えて決断を出して目標を作ってみたいな話がすごく多いですね。

あとは地上から1.5mぐらいの高さの台から後ろ向きで倒れるアクティビティもありました。倒れる先にはみんなが手をさしのべて倒れても大丈夫なように構えて待ってくれてるんです。

信頼するしかないというか?

ここに無心で倒れるんです。自分にとっては信頼って何だっけみたいな感じになっちゃって、支えてくれる人たちのことは確かに自分は信頼しているつもりなんだけど、でも怖くって完全に頼ることができない。結局信頼するためにはまず自分のことを信じることもすごく必要なんだなって感じました。。そんな5日間をみんなで過ごすとめっちゃ仲良くなるっていう。これがプロジェクトアドベンチャー。5日間が終わった後は、そこで学んだアクティビティの中で安全なものだけどチョイスして社内のメンバーにファシリテーションして、展開してみたいな。

すごいですね。学んだ事すぐに社内に活かすタイプなんですね。

そうですね。やっぱ実践ないとやっぱり経験としてなんかわかんないし。
うちの会社は体を動かす人が好きなので、プロジェクトアドベンチャーのアクティビティはすごく人気があって、会社の人70人で輪をくぐるっていうアクティビティなんかはウケました。

社内で行なっている様子
手をつなぐのは私苦手かも。

接触があるので難しいんですよね。手を繋ぐっていう段階までいかない人もいるので、そこは色々考えながらやってますけどね。プロジェクトアドベンチャーの合宿に行くと、転落すると死んじゃうみたいな危険を伴うアクティビティをするので、そんなことは言ってられないから、徐々にお互いの関係を築いていくようなつくりになっています。
体を使う系ではなくてインドア派の人のためにレゴシリアスプレイについても紹介します。決まったキットを使って「あなたにとっての何々を表現してください」みたいなお題で作品を作ってもらい、その作品を通じて自身の考えを語ってもらう、というメソッドなんです。しかしレゴのブロックやパーツを使ってあなたにとっての理想の職場環境っていうのがうまく作ろうと思っても限られたパーツでは表現しきれない。だからその「ぱっと見て表現しきれていない作品」に「自身の説明」を加えることと、その作品に対して質問されることで内省が促されるようなワークです。表現しきれない抽象的なものだからこそそれを通じて対話できる。もし絵を描く、とかだとどうしても「上手い下手」が気になってしまうので、誰にできる単純なものを通じて話して、聞く人もちゃんと好奇心を持って聞く。表現しようとすること、理解しようとすることを本気でやるので、こっちは脳が疲れるワークになります。

最後に何か伝えたいことがあったらぜひ!

本当にやりたいこと、もっと学びたいことがあるのですが、採用の業務のウェイトが多くなってしまっていて疎かになっていることが昨年一年の課題でした。
この1年いろいろなエンジニア志望の方とお会いして、ご自身のやりたいことがあまり見えていなかったり、見えているけどうまく表現できていないなと感じる方がいらっしゃるように感じています。LEGO(R) SERIOUS PLAY(R) ・Points of You(R)によるセッションはそういったご自身の内省を支援するのにぴったりなので、転職の意志が固まっていない段階でも構わないので、ご相談いただければ何かしらお力になれると思います。エンジニア志望以外でもぜひキャリアについての悩みはご相談ください。

おまけのようになってしまいますが、ご自身のやりたいことが見えていて、私と一緒に働きたい!私の作っている研修を受けてみたい!というエンジニアの方はぜひこちらをご覧になって面談希望の旨、ご連絡いただけると嬉しいです。https://recruit.photocreate.co.jp / https://jobs.forkwell.com/photocreate/jobs/3927

その他、 ボードゲーム、プロジェクトアドベンチャーのアクティビティの体験などはいつでもご相談ください!

インタビュー後に見せていただいたカードゲームを実践に体験させていただきました!私自身もゲームづくりがいま興味あるのでとても参考になりつつ、楽しくプレイさせていただきました。今回でインタビュー記事最終回となります。伊藤さんインタビューありがとうございました!