プロダクトマネージャーが天職だと思えた理由と成長し続ける学びとは?そしてこれから。


今回のキャリアインタビューは「プロダクトマネージャーの丹野さん」です。
※本記事はプロダクトオーナー祭り2018 ~世界を創るのは俺たちだ!~ 2018/02/17(土) のひとつのセッション内で行われたインタビュー内容を成形し、まとめたものとなります。

<記事一覧>
本インタビュー記事は以下の3つで構成いたします。
インタビューのポイントと編集後記
1)「発信する」楽しさが作った転職をきっかけ
2)「計画的に目指した研究職」からの「プロダクトを作る楽しさ」を知った原体験とは?
3)プロダクトマネージャーが天職だと思えた理由と成長し続ける学びとは?&今後やりたいこと・大切にしていること

記事3)
プロダクトマネージャーが天職だと思えた理由と成長し続ける学びとは?
次はモチベーションが二回急激に落ちているタイミングについてお尋ねしています。
<丹野さんの人生モチベーショングラフ >

今までの仕事でモチベーションが沈んだときはどんな経験でしたか?

これまでのキャリアで最初に困難に直面したのはクライアント先に常駐してコールセンターの運営を改善するコンサルティング業務をしていた時ですね。業務の難易度が自分のキャパシティを超えていてクライアントの期待に添えず、とにかくクライアントさんに謝り続けながら仕事をしていた時期がありました。オペレーターのみなさんをマネジメントしながら業務改善を進めていくのがすごく大変でした。
この時は本当に大変でした。 今は吸ってないんですが当時はスモーカーだったので、クライアントのオフィスの最寄り駅に着くとまず公園に行ってタバコを一服吸いながら気合を入れないと出勤できないような状態でした(笑)。

2回目はもうサイボウズ時代です。それまでのサイボウズのプロダクトにはない新しいコンセプトのグループウェアを作ろうというプロジェクトにアサインされました。でも1年近くかかっても全くプロダクトが完成しなかったんですね。チームは混乱してプロダクト開発は進まず、プロトタイプを見た営業担当の役員からは「これは売る気がしない」と言わる。そして経理担当の役員からは「これ以上投資はすべきでない」と言われてしまいました。結果として1年間思いを込めて作り続けてきたプロジェクトがクローズすることになりました。その時は相当落ち込みましたね。

サイボウズ時代に自分の担当したプロダクトがうまくいかない経験をしてもやっぱりPMが好きって思えたのは何故でしょうか。

PMが自分の天職だと思っていていたので、そのことが原因でPMを辞めようとは思わなかったですね。ただ会社は辞めようとは思いましたが(笑)。もう独立しようかな、みたいな。今思えば僕の実力が不足していたんですが。失敗の原因は開発チームとの信頼関係作れてなかったりとか、作ろうとしてるプロダクトに十分共感してもらえてなかったりとか、今思うといろいろ反省点があります。

PMが天職だと思えるのはどんなところにあるのでしょうか。

自分で言うのはおこがましいですが、アイディアマンではあると思います。これはこうした方がいいんじゃないっていうのを右脳でパッと思い付いて、左脳で言語化して伝えるみたいなのは比較的得意な方なんじゃないかなと思います。また、いいプロダクトを作るためには使う人の視点に立って物事を見るのが大事です。つまり自分のアイデアをターゲットユーザー視点で客観的に見る、ということです。僕は役作りというか、使う人の立場になりきるのが比較的得意なのでそういう点はPMワークに役立っているんじゃないかな。
あとは色々な分野に好奇心を持っているという点でしょうか。マーケティングやセールスにも興味がある。PMはすべての分野で100点満点の実力がなくてもいいと思うのです。でもどんな分野でもその分野の専門家とコミュニケーションできる必要がある。そういう意味では好奇心を持てるということが重要かなと思います。後は何よりもテクノロジーで問題を解決することが好きですね。

PMは他業種の専門家の言語を理解しながら、ハブとなってプロジェクトを進める。
過去の丹野さんのように自分がPMだとまだ気づいてない人たちがいると思います。PMはどんな人を指すと言えそうでしょうか。

多くの人が社内でディレクターやプロデューサーという肩書だったり、企画の人とかって言われてるんじゃないでしょうか。実際に自分で手を動かしてコードを書いてるわけでもないし、マーケティングのキャンペーンを自分で展開してるわけでもない。「そもそも何を作るべきか」というプロダクトのアイデアを考えるだけでなく、アイデアを実現するためにいろんな関係者と調整して駆け回っている。プロダクトを世に出すためなら何でもやります、みたいな人ですね。そういう人は肩書がPMじゃなくてもPMとしての役割を担っているんじゃないかなと思いますね。

PMはなんでもやっているっていうということは、どれを専門というよりはいろんな事ができる人ってというこのなのでしょうか。

プロダクトを世の中に出すプロセスっていろんな人が関わるんですよね。ソフトウェアを作るのはエンジニアですけど、それを世の中に広めていくのはマーケターです。BtoBのプロダクトであればセールスの人達も関わります。法律に違反しないような物を作らなきゃいけないですし、広報の人とも協力してメディアを通じて発信することもあります。関係する部門が非常に多いんですね。各部門とスムーズにコミュニケーションする事が非常に重要になる役割です。例えばエンジニア部門の人とセールス部門の人が直接コミュニケーションするのは共通言語がないのでなかなか難しかったりするんですね。そこを繋ぐハブとしてPMがいて、通訳としてそれぞれの共通言語を理解しながらハブとなってプロジェクトを進めていく。そんな仕事もPMの役割の1つです。ですから人に共感して動いてもらう、というのが大事だと特に思ってます。

それぞれのプロ達を繋げられるようにサポートするのも1つの重要な役割でもあると?

そうですね。プロダクトの方向性を示し、それが実現されるようにステークホルダーに協力してもらう、共感を得ながら協力してもらうのがPMの仕事かなと思いますね。

PMとして足りないと思うことは自ら学びに社外にも学びを求めていった
仕事で学ぶ以外にも、外でも学ばれているとお聞きましたが、学ぶきっかけや、どんなことされてきたかを教えてください。

コールセンター向けのシステムを作っていたとき、スーパーバイザーや数百人いるオペレーターの業務をいかに効率化するかを考えていました。現場を見ながら現場に必要な物を自分で考え、自分で開発をしてシステム導入までしていました。しかし作ったプロダクトを世の中に広めるとか、他社との競争の中で生き残るプロダクトをどう作るのか、みたいなことはあんまり考えずにプロダクトを作ってたんですね。ある時期にそれまでの知識や経験だけでは市場で価値のあるプロダクトを作っていくの難しいと気が付きまして、いくつか学校に通いました。
例えば東京大学のMOT(Management of Technology)のコースに2年通い「競争戦略」や「マネジメント」などについて学びました。後は宣伝会議が開催している「マーケティング基礎講座」「ブランディング講座」「コピーライティング講座」など、マーケティング関連の複数の講座を受けました。グロービスの短期講座も通いましたね。もちろん自分で本読んで勉強もしていたのですが、こうした講座に通ってみて思ったのは、本当に実践的なフレームワークやケーススタディは本には書かれていない、ということです。独学で勉強するよりも専門家から習ったほうが効率的に学べますし、周りの仲間と切磋琢磨する環境でもあります。学校に通うのは一人で黙々と学ぶよりもずっといいなと思いました。

独身だった時は仕事が終われば全て自分の時間だったので、土日は学校に行くとか、水曜日の夜は必ず学校に行く時間として確保して仕事が終わるように自己管理するといったことをしていました。結婚して家族ができると自分の時間が少なくなります。だから朝早く起きて30分間オンラインの英会話レッスンを受けたり、通勤時間中に本を読んだりと細切れの時間をうまく使いながら勉強しています。

講座などの自分への投資はどのような基準でどう探していますか?

僕には自分の経験や知識を棚卸して言語化する習慣があります。そうすると逆に自分が知らないところが明らかになってくるので、それ補うための必要な手段を考えて、学習手段や学校を選んでいました。自分の弱点を自覚して普段からアンテナを張っておくことで、その時々で自分に必要な講座に出会えた感じがします。PMの仕事は結局問題解決です。プロダクトの力で問題解決をしていく上で自分に足りないものは何なんだろう、と自分で考えながら補って行っています。

PMとして足りない物ってどうやって気付いて学びにいくのでしょうか?具体的にはどういう風に頭の中で整理されて、これは知らないと思って勉強されるのかの過程が知りたいなと。

難しいですね。何かが足りないなと思うんですよね。例えば今は英語を勉強してるんですけど、勉強し始めたのは海外のPMともっと交流した いなと思ったのがきっかけです。英語を読めるけど話せないんですよね。だから英会話の勉強をしなきゃって自然に思ったんです。やりたいと思った事が実現できない。その理由を考えると足りないものがわかる。学ばなきゃいけない物に辿り着きます。

やろうと思った時できなかったりとか、それが逆に障害になってると思って気付いたりとか?

そうですね。こうありたいなって思う姿とのギャップをどう埋めたらいいんだろうって時に学ばなきゃいけない事が見えてくる。まあ実際外れてる場合もあるんですけどね。

各分野の事を知っておく必要があり、そんなに全部学びきれないよって思う人もいる思うのですが、どのくらい極めたらいいのでしょうか。

それぞれ60点でいいと思います。 僕はサイボウズ時代に色々と仕事を任せてもらいました。自分でプレスリリース書いたり、自分で広告運用したりとか、社内スタートアップみたいな感じで何でもやらせてもらえたんですね。それがいろんな分野について60点のレベルだけわかるようになったきっかけだったんですね。

PMという仕事って人から不要と思われていないか不安に感じる事はないですか?そう思われないための心がけはありますか?

PMなんて不要なのでは、と思った事は僕にもあります。PMがいなくても回るんじゃないか、と。エンジニア、デザイナーが協力して問題解決にあたり、チームとしてプロダクトマネジメントが担保される状態が作れればいいんじゃないか、と思った時もあります。でも大きな何か方向転換を伴うようなプロダクトのアップデートや、うまくいっていない状態を打破するような局面では、やっぱりPMが必要なんじゃないかと強く思います。

PMとして他でも通用するかっていう不安はなかったんでしょうか?

他の環境でも通用するかっていう不安は、もちろん今でもあります。ただ実際に全然違うフェーズの会社でPMとして働いてみてそれなりに期待に沿う事ができたということは自分にとっての自信になりました。かつ会社自体がすごくどんどん成長してフェーズが変わっていて次々と新しい経験ができるので、自分の経験やスキルをアップアップデートし続けられている実感がありますね。

今後やりたいこと・大切にしていること
少し視点を変えてこれからの未来の話にフォーカスをかえてお話しを伺っていきたいと思います。

今後はPMになりたいひとの支援や支援できるコミュニティ・環境を作っていきたい。
今後こんな事やってみたいとかの夢はありますか?

僕のキャリアは「プロダクトを作る」という事に向き合って来た12年間でした。これからも向き合い続けるだろうなと思いつつ、これからは自分自身でプロダクトを作るだけでなく、プロダクトを作る人を作る、プロダクトを作る組織を作るとか、もっというとプロダクトを作る地域を作る、といった事に関われるといいなと思っています。そういう思いで、これからプロダクトマネージャーになりたいという方に対して自分の経験をシェアすることでキャリア形成のお手伝いをしています。USではプロダクトマネジメントに関するノウハウが言語化されてシリコンバレーなどの地域単位で知見が共有されていますが、日本はまだまだそういう状態ではないと思っています。ですから日本でも東京だけでなく色々な地域でプロダクト開発のノウハウ、良いプロダクトを作るノウハウが共有される環境を作っていくようなことをこれからやっていけたらなと思ってます。

楽しいことをやっているときが一番成長する。楽しいことしかやらないと決めたらどんどん楽しくなってきた。
丹野さんが大切にしていることはありますか?

楽しいことをやる、ということですね。自分にとってもそうですし、チームにとっても楽しいということが重要だと思います。僕は自らPMとしてプロダクトを作る以外にもエンジニアリング組織のマネジメントにも関わっていますが、人間は楽しい事をやってる時が1番成長するのだと思います。ですから、その人が楽しいと思える機会を提供するということを大切にしています。楽しいと感じる機会を増やすことで良いチームができて、そのチームから良いプロダクトが生まれるんじゃないかな。

もちろん楽しいことばかりが続くとは限りません。PMは責任の範囲が広い割に権限が少ないのです。良いプロダクトを作るために深いコミットメントを求められるんですが、うまく行かないときもたくさんあります。先程お話ししたように、プロジェクトが中止になってそれまでの努力が水の泡になる、みたいな経験もあったしし、苦手な領域のプロダクトを担当してうまくいかなかったこともあります。
そういうときはモチベーションが暴落してしまうこともあるんですが、「時が必ず解決する」というのが自分の経験則です。ですからそういう時はしばらくおとなしくしていると半年か1年ぐらいでまた調子がよくなる。むしろそれまで以上に調子が良くなって、プロダクト開発が楽しくなります。

楽しいことしようと決めたのって何かきっかけがありますか?

すごくプライベートな話ですが、自分の子供が最近孫泰蔵さんのスタートアップクラブに通い始めたんです。そこにはレーザーカッター・3Dプリンターといった最新の設備で自由に物作りができて、プログラミングができる環境があり、何か物作りをしたい子供にとっては天国みたいな場所なんですが、そこに通い始めたら子供がとてもいきいきとし始めたんです。学校ではあまり目立たない感じの子なんですが、そういう自由な環境を与えたらすごく個性を発揮しだしたんですね。テレビに取材されたり、プログラミングコンテストで賞を取ったりしたこともありました。好きな環境、楽しいと思える環境にいると子どもはすごく成長するんだなというのを親として傍で見ていて実感しました。子どもだけじゃなくて大人も同じですよね。「楽しい」ということが大きな原動力になり、人は成長する。だからその人にとって楽しいかどうかという事を大事にするようにしています。

部長として人が楽しいと思えることができる関係や機会づくりを大事にしたい。
自分自身も楽しいと思える環境を作っていく事でより人を成長を支援いきたいと?

プロダクト開発部の部長としてチームをマネジメントしていく上でも、本当にその人が何が楽しいと思うかっていうのを1on1で確認しています。
1on1などを通して耳を傾け、楽しい環境で働けるように努めています。僕の専門がPMでエンジニアリングではないので、エンジニアのメンバーに対して部長として提供できるバリューってそういうところでしかないんですよね。最新のWebのテクノロジーは本職の人ほど強くはないので、技術的な知識を伝えたりアドバイスをする事は難しい。ですから働く環境、楽しく働ける機会を作ることに注力しています。

企業で働くことを今は選び続けてらっしゃいますが、起業は選択肢にありますか?

仲間の力を借りた方がより大きな事ができます。今一緒に働いてる事業部長は自分にない物すごく持ってるなと思っていますし、一緒にやってるからこそお互いに補い合って上手くいってる部分もあるんだろうなと感じます。起業して仲間を探すところからやるよりも、いい仲間がいる環境でやりたいことをやった方がいいかなと。でも2020年ぐらいには何か自分でもやってみたいですね。

どうもありがとうございました!

これで、3)プロダクトマネージャーが天職だと思えた理由と成長し続ける学びとは?&今後やりたいこと・大切にしていることはおわります。全部記事が終わりましたが、いかがだったでしょうか。

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